2014年の3つ
◎ 人:画家・牧野伊三夫
◎ 道具:したばき手袋
◎ 旅:奈良おん祭 遷幸の儀
選者プロフィール
正成美雪 | MIYUKI MASANARI
1975年、富山生まれ。画家、造形作家。「四月と十月」同人。12年、東京から富山へ活動拠点を移す。古本をセレクト、販売する「ricca」としても活動し、13年にFALLにてイベント「古本 × 豆本」を企画。今年3月にも古本と蔵書票の展示を予定している。
book.geocities.jp/mmassan_masanari
画家・牧野伊三夫
4月下旬に開催した「BOOKDAYとやま」というイベントの、プレイベントとして、富山で牧野さんの絵画教室を私が企画。やり取りを始めたら、フリーペーパー「飛騨」の取材の際に牧野さんはけっこう富山経由で飛騨に入ることが多いとのこと。で、牧野さん来富の際に実行委員たちで富山のナイトライフを紹介。絵画教室も無事終了した後に、「飛騨」の次号が富山から飛騨へ行く「高山線」の旅を特集することに。
そんな御縁でBOOKDAYとやま実行委員たちが栄えある「飛騨」10号(文章はあの「酒とつまみ」の大竹聡さん)に見開きのグラビアで登場!
そして、富山駅前のイタリアン飲み屋で飾っていただいている、私の版画作品を牧野さんが見たことがきっかけで、「美術同人誌 四月と十月」の同人にしていただくことに。年末の例会ではエンテツさんこと遠藤哲夫さんや同郷の作村裕介さんなどの濃いメンツと酒を酌み交わし、幸せなひとときだった。
以前から面識はあったけれど、お互いプライベートで節目な時期が重なったこともあり、牧野さんと「ほんとうに出会った」というのはまさに2014年だったと思う。
(そういえば、三品さんにあげたあの作品は、銀座月光荘での牧野絵画教室で作ったものでした。)
したばき手袋
梅雨頃から両手指先の手湿疹に悩まされ、お盆までしのぎのレジ仕事が忙しく指先を使いすぎたため、悪化。盆明けには両手全ての指先の皮膚がなくなった。
薄い皮が張るまではステロイドを使ったが、皮が張ってきてからはステロイドでは逆にかぶれるため、自然由来成分のクリーム(はちみつと蜜蝋とオリーブオイルを練りあわせたその名も「ミラクルクリーム」)を指先に塗り、手袋を2枚重ねて仕事に復帰した。
レトルトパウチの袋の端ですぐに指先が切れるくらい皮膚が薄いため、常時、綿100%の、本来の用途としては炊事用ゴム手袋の下につける手袋「したばき手袋」を、百円均一の店で購入して着用していた。そして判明、反応は悪くなるけれどスマートホンが操ることができる。
そんなこんなで指先は一時よりはだいぶ良くなったけれども、今度は爪が痛々しく生え変わってきていて、違った意味で手袋をしている今日この頃。
奈良おん祭 遷幸の儀
2014年年の瀬の出来事だけれど、尋常ではないくらいに衝撃を受けたので、これは上げておかないと。
能登「龍昌寺」の住職・村田和樹さん主催で古文を声を出して読む、というスカイプ勉強会に昨年より参加。現在のテキストは「古事記」。勉強会参加メンバーで一回奈良に行って、「古事記」に出てくる場所を体感しようと話が持ち上がり、毎年12月16日深夜より執り行われる若宮神社での「遷幸の儀」を見ることに。
当日の昼にぶらついていて入ったお店「フルコト」の方に「めちゃくちゃ寒いからホッカイロを両足の裏と腰に貼りなさい」とアドバイスを受け、宿泊先のドミトリーの方にも「持っている服は着れるだけ着た方がいい」と言われ、そのようにして挑んだ深夜12時、春日大社二の酉前。
丸太の片方の端に火をつけたものをひきずる人2名が道の左右を先導。明かりはこれっきり。移動中の神様の前では明かりをつけてはいけないため、信号・街灯・自動販売機・護衛する警官の電飾つきのベストと誘導灯、すべての明かりが消えている。もちろん撮影禁止。秘儀中の秘儀。折りしも記録的寒波襲来。強い寒風がざあざあと境内の木々をざわめかせていた。
大量の榊を持ち、口に白い紙を貼った薄い朱色や白色の聖徳太子みたいな格好の人たちが「おおおおお~」といいながら神様を運ぶ。ただでさえ神社に行くとテンションあがる性質なので、マックスハイになり、感涙。
神様のあとに普通の格好をして口に白い紙をつけた人たちが「おおおおお~」と通過。その後に自分たち見物客の団体が「おおおおお~」と言いながら後につく。総勢500人くらいか、もっとか。自分で「おおおおお~」と発しながら、そういえばアイドルの曲の合間にも「おおおおお~」とファンが合いの手入れるなあ、とくだらないことが頭をよぎる。神様を待っている間につらかった寒さも移動でちょっと和らぐ。そして仮のお宮に無事着いたところで松明が灯され、照明も着いて、神様への接待が始まる。様々な食べ物をお膳に乗せた人が次から次へとお宮に献上していく。寒さでお膳を持つ手元が震えている人もいる。そのあと巫女2名による神楽。見た感じそんなに厚着じゃないのに、おそろし い寒さの中、少しのブレもなく動きがきっちりと合っていて感動。しかしこの神楽の途中で、寒さに耐えかねて宿へ帰った。カイロを足の裏だけでなく、甲側にも貼っておけばよかった…。足の指が凍傷でやられる、と本気で思った年の暮。寒波襲来により翌日昼の芸能奉納見物をあきらめ、和樹さんの車に乗せてもらい、午前中に北陸へ向かい出発。途中の道でホワイトアウトや事故車や対向車線の立往生を目の当たりにしながら無事帰宅。今年も行きたいなあ。足の冷えない不思議なくつ下買わなくちゃ。
2014年の3つ もくじ
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[FALL新春企画] ◎2014年の3つ:正成美雪さんの場合 ◎牧野伊三夫・したばき手袋・奈良おん祭 ◎毎年恒例のウェブ企画。毎週、数名ずつアップする予定。お楽しみいただければ。
http://t.co/M9R9EmLf6r pic.twitter.com/aH3MndgE0d— TERUOKI MISHINA (@gallery_FALL) 2015, 1月 7
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